ユニバーサルアートについて | 教員エッセイ

ユニバーサルアートについて

「作る喜びは生きる喜び・ユニバーサルなアートワークショップ」

2008年の夏、2009年の上半期とドイツに研究滞在する機会を得ました。こどもの街フェスティバル(ミニ・ミュンヘン)や小児病院で、ユニバーサルなアートワークショップを実施してきたのです。誰でも失敗なく作品を完成させることができる仕組み、具体的には立方体型の万華鏡を作るワークショップなのですが、シンプルな工作ワークショップを通して、人々がどれほどの達成感と喜びを感じ得るのかを研究するためでした。

北ドイツのシュベリーンという元東ドイツの街の病棟では、東西ドイツ統一後の社会の混乱で、家庭崩壊による精神的なダメージを持つこどもと青年達が収容されていました。普段、提供されるワークショップに参加し難い収容者も、こののぞき箱のワークショップでは、2時間ほどかかる制作に不思議なほど集中して取り組んでくれました。病院スタッフからもクリエイティブな時間の共有が精神的な治癒に役立つと積極的な評価を得ることができました。

だれもが失敗なく創作し達成感を得ることができるユニバーサルな仕組みを通して、「美術」というアプローチが人々に元気を与え、心や体の病の治癒に役立ち、人と社会の健康な有り様を形成する「核」になり得るのではと日々考えています。皆さん一緒に、さらに楽しく描き、作り、生きていることを実感できるアートとデザインによる仕組みを考え、それらに簡単にアクセスすることができる環境作りを目指していきましょう。

(ヒーリング表現領域教授 ヤマザキミノリ)